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革の誤解を解く その1 

  • 2014-01-11
  • /Et cetera

ライトニング2月号でも解説を試みましたが、
レザージャケットを作るブランドを代表する人や企画の方にまで
鞣しや仕上げに関しての誤解が多く、間違った情報が発信され続けているので
こちらでも簡単に訂正をしておきます。

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(写真は新喜皮革のピット槽)

しかし「簡単に」と言っても長い文章になってしまいますので、
間違った情報の訂正を先に書いておきます。
① クロム鞣しを済ませた革をピット槽につけて二次鞣し(渋鞣し)をすることはできません。
② ヴィンテージ(オリジナル)には渋鞣し、クロム鞣しの両方がありますが
「クロムが飛んでしまって渋に見える」ということはありません。
金属は無くなってしまわないのです。
③ ヴィンテージの「昔は農耕馬を使ったから革が厚い」は間違いです。
農耕馬かどうかで厚みは変わりません。
冬に屠殺する方が厚い、ということは言えます。
④ 新喜皮革さんでは混合鞣しをしません。馬革に限定すれば意味が無いとお考えです。

さて、「その1」では弊社のメインマテリアルである馬革に限定して解説します。

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(写真は新喜皮革のピット槽)

まず、馬革の原皮の殆どはヨーロッパから塩漬けで輸入されます。
この時点では鞣しが施されていません。
中東、南米から輸入されるものもありますが、扱いが悪く、良い皮が少ないので
基本的にレザージャケットには向きません。
日本でも毎日のように馬は屠殺されていますが、これらの革は靴の裏張りに使われています。

ヨーロッパから輸入された原皮はタンナー(新喜皮革など)で鞣されます。
鞣しとは「皮」が腐らないように劣化の原因となるコラーゲン繊維と
他の成分を結合させて「革」にすることを言います。
鞣しは殆どの場合、渋鞣しとクロム鞣しという2種類の鞣しに分けられます。
渋鞣し(タンニン鞣し)とは古来より続く、植物由来成分のタンニンを使う鞣しであり、
クロム鞣しとは塩基性硫酸クロムの鞣し剤を使う鞣しのことをいいます。

渋とクロム、どちらの鞣しを選択するかは使用目的によって決まります。
弊社を例にとると、風合いを大事にしたいジャケットだと渋鞣し、
薄く漉いてしなやかさが必要なグローブだとクロム鞣し、という具合です。

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 (写真は新喜皮革のドラム)

ここで混合鞣し(コンビネーション・タンニング)だとどうか、ということがあります。
渋とクロム、両方の良いところを合わせ持った革が出来るのではないか、ということです。
クロム鞣しを済ませた革に渋を足し、風合いをプラスする、
もしくは、渋鞣しを済ませた革にクロムを足し、強度を増す、という考え方です。
これらの技法は決して珍しい技法ではなく、弊社においてもフライト・ジャケットの
ブームのさなかで何度か採用したこともあります。
しかし、混合鞣しでは馬革の表情がどうしても生かすことができないこと、
もともと渋鞣しで十分な強度があることから、近年では馬革に関して混合鞣しを行っておりません。

弊社では弊社の求めるホースハイドの革質に混合鞣しは不向きである、と判断したことと、
新喜皮革さんが「混合なんかせえへん。」という姿勢なので
おそらく今後も混合鞣しをすることはないでしょう。
しかし、クロム鞣しの後で渋を入れて風合いを出した革、
渋鞣しの後でクロムを入れて強度を増した革、は今も流通しています。
弊社とは違うモノ作りでは重宝されることもあるのです。

ここで誤解があるのですが、クロム鞣しを施した革はピット槽につけることはできません。
ピット槽では渋を浸透させることが出来ないのみならず、
ピット槽をダメにしてしまうからなのです。
クロムを先にしてしまう場合、表面のクロムを抜き(脱クロ)、ドラムで渋を入れることになります。

長くなってきたので「染色」「仕上げ」は「その2」か「その3」へ続きます。

 

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  • |Posted at 14/01/11